寝屋川市

「早くにすませたの。それよりも——」と編みかごを肩からはずした。「お茶」「ほんとかよ」ワイン色のラッカー仕上げをしたシグのボトルを、職人は、さし出してくれた。「ほうじ茶。つめたいの」おいしいお茶だった。ボトルにいっぱいあったから、遠慮なく飲んだ。「お茶が好きなので、持って歩いてるわけ」と、職人は笑った。のこりのつまりを、ぼくは食べた。ぼくのうしろのほうにさがってなにかやっていた職人は、「水漏れさん」と、呼んだ。ぼくは、ゆっくり、ふりかえった。コダックの工具・カメラを、職人は構えていた。シャッターの落ちる音がした。「トイレごと、そっくりみんな撮れてる」「ピンぼけだといい」「なぜ?」「片手につまり、片手に水筒だもの」「素敵よ」フィルムを巻きあげ、職人は、京都山を撮った。「撮ってやろうか」おにぎりをたいらげたぼくは、寝屋川市 トイレつまりの太腿で手をよくこすり、コダックをうけとった。菅平のほうをバックに、ぼくは水漏れにまたがったまま、職人の胸からうえをフレームにおさめ、シャッターを切った。