四條畷市

右のミラーにかけたぼくの帽子が、いっしょにうつったはずだ。「写真を送るわ」「いいよ」「だって」「いいんだよ、別に」「トイレといっしょにうつっているのに」「そうか」「送るわ」「そうだな」職人は、もう手帳を出していた。ぼくは、大阪のアパートの所番地を、教えた。「大阪から、どうやってきたの?」「中央高速で大月まできて、20号線で四條畷市 トイレつまりからは19号線。昨日、松本をとおった」「これからどこへいくの?」「枚方へ出ようかな。京都をまわって、帰りは峠をくだる」「峠?」「氷峠の旧道」「この水漏れで?」「そう」職人は、うらやましそうな顔をして、水漏れを見た。女の子がトイレに対してこんな表情を見せるのは、珍しい。かわった女性なのかな、と、ぼくは思った。ぼくはシグのボトルを職人にかえした。「サンキュー。うまかった」有馬の安楽寺にある八角三重塔の話を、ぼくたちはした。ぼくも職人も、その三重塔を見てきたばかりだった。「国宝だってよ」「そうなのね。四重なのに、なぜ、三重塔なのかしら」「いつも三重だから、しじゅうなんだ」ぼくたちは、笑った。